王子様の猫
- 著者:
- 小鳥遊ひよ
- イラスト:
- 旭炬
- 発売日:
- 2013年02月20日
- 定価:
- 660円(10%税込)
僕から逃げるなんて、許さないよ?
幼いころ、記憶をなくして森でさまよっていたところを、王子サミュエルに拾われた少女リル。サミュエルは、そんな彼女を猫として飼い始め、溺愛するようになる。森の奥深く、訪れる者のほとんどいない離宮で、いつしかふたりは互いの身体に溺れるようになるのだが……。リルの過去を知る者の出現で、優しかった王子の様子が豹変し――!?
リル
自分を猫と思い込み、サミュエルに飼われている。
サミュエル
リルを猫ととして飼い、溺愛する王子。
「まるで、さかりのついた雌猫だね」
皮肉に歪ませた唇で冷ややかに言うと、リルはきょとんと首を傾げた。
「さかりって? それは褒めてるの?」
「貶してるんだよ」
短く吐き出すような言葉に、リルの整った顔が哀しそうに崩れた。さかりという言葉はわからなくても、貶すという言葉は理解出来たようだ。
「王子様は、リルが嫌い?」
すがりつき、泣きそうに潤む瞳が訴えている。
『王子様に嫌われたら生きていけない』
サミュエルは優越の笑みを浮かべると、リルの髪を指に絡ませ唇を寄せた。
「好きだよ、リル。僕の言うことを素直に信じて、何の疑いも持たずに傍に寄り添ってくれる君が好き」
「うん、リルは王子様のこと、信じてる。ずっと王子様の傍にい……んっ」
無邪気に微笑むリルの言葉を遮るように唇を奪い、小さな舌を強く吸い上げる。リルの方からも積極的に唇を重ねてきていやらしく舌を絡めると、唇の隙間から透明な液体が零れ、つうっと顎の下の辺りまで光る筋を作った。筋に沿って唇を這わせ、鎖骨を通り過ぎてさらに下りると、サミュエルは舌先で白い肌と桃色の境目を丸く舐め、硬くなった胸の先をぱくりと口に含んだ。
「はぁんっ! んぁ、あっ、ふっ」
きめ細やかな肌の上にふわっと鳥肌が浮き、小さな体が小刻みに上下に揺れ始める。
「大きな喘ぎ声だね」
「はぁ……ダメ? 王子様、嫌い?」
「いつもは好きだけど、今日は君の喘ぎ声は聞きたくない」
そう言われた途端、リルは唇を噛んで声を押し殺した。その様子を見て、サミュエルの喉の奥が楽しそうに鳴った。
「僕にこうされるのは好き?」
赤い蕾を舌先で転がしながら、サミュエルが問うと、リルは口元に軽く手を添えて頷いた。紅潮する頬と声を抑えて切なく震える唇が、それが嘘ではないことを示している。サミュエルは濡れた耳にふうっと息を吹きかけながら、優しく甘く囁いた。
「いい子だね。じゃあ、声に出して答えてごらん」
「はぁっ! んっ、あぁ……好き、こうされるの、好き」
嬌声を混ぜながら答えるリルの唇の先に、人差し指がそっと置かれる。
「喘いだらダメだよ。今日は聞きたくないって言っただろう?」
再び泣きそうな顔で唇を固く結ぶリルを薄目で見ながら、サミュエルはドレスの裾をたくし上げ、指を下腹部に忍ばせた。水分をたっぷり含んだ花びらを押し開き、その中から硬く膨らむ場所を探り当てると、二本の指できゅっと摘まんだ。
「はぁっんっ!」
細い腕をサミュエルの背中に回し、リルがしがみついて鳴き声を上げる。小さな体は全身に汗が滲み、熱を帯び、触れているサミュエルの体まで熱くする。
「あんっ、そこ、気持ちいい。はぁ……」
体の奥まで快感に震え、リルは恍惚の表情を湛えている。サミュエルはわざと冷たく引きはがし、怖い顔を作るとリルを軽く睨みつけた。
「僕はさっき、喘がないでって言ったよね? そんなこともすぐに忘れるぐらい、リルは悪い子なのかい?」
今度こそ本当に、サミュエルが怒ったと思ったのだろう。恍惚の表情から一転、リルの顔が哀しみに曇る。
「ごめんなさい、王子様。リルね、リル……」
リルが謝る必要も、言い訳を探す必要もない、くだらなくて理不尽なサミュエルの怒りを静めるために、リルは必死に言葉を探している。子どもの頃からほとんど成長していないであろう心を痛め、小さな頭を懸命に回転させてサミュエルに嫌われないようにしている。全ては、サミュエルに捨てられないために。
サミュエルはふっと表情を和らげると、赤く熟した唇を吸い上げ、蕾を弄っていた指を中に入れた。くちゅっと淫靡な音がして、中からいやらしい匂いのする雫が溢れ出す。
「んっ、くっ、ふあっ」
吐息が零れるのを防ぐように、リルは積極的に自分から唇を合わせた。快感を我慢すればするほど大きくなる興奮に、リルの唇が震える。
「今度こそ、僕の言うことを聞くんだよ?」
唇を離し、リルの耳たぶを甘く食む。びくんっと背中を反らすと同時に、サミュエルの指を咥え込んだ中がきつく締まった。