虜囚
- 著者:
- 仁賀奈
- イラスト:
- 天野ちぎり
- 発売日:
- 2013年02月20日
- 定価:
- 660円(10%税込)
今日、僕は義姉の身体を穢すつもりだ。
両親のとつぜんの死により、公爵位を継いだラルフ。清らかな心を持つ姉シャーリーに異常な執着心を抱いていた彼は、両親に邪魔されないふたりだけの日々を満喫していた。シャーリーとラルフには血の繋がりはない。いつか彼女にその真実を告げて結婚し、ずっとふたりで生きていくと決めていた。それなのに、シャーリーに恋人ができたと知らされて――。『監禁』と同じ物語を弟ラルフ視点で描く、sideB。
ラルフ
若き公爵。双子として一緒に育ったシャーリーに異常な執着心を抱いている。
シャーリー
他人を疑うことを知らない清らかな少女。ラルフの双子の姉として育てられた。
「どうしたの?」
まるで幼子のような仕草だ。かわいくて抱きしめたくなってしまう。
「……な、なんでも……」
ラルフはシャーリーの下僕同然だ。どんな願いだって叶える。だから、なにも遠慮などして欲しくなかった。
「こっちおいでよ」
「……でも……」
シャーリーは俯いたまま、軽く唇を噛む。そんな表情を見せられると、今すぐにも抱きたくなってしまう。
「怖くないから、こっちにおいで」
怯えながらも、シャーリーはそっとラルフに擦り寄ってきた。思いがけず、そのまま腕を回され、ギュッとしがみつかれる。
「ラルフ」
全身が歓喜に戦慄く。甘い感動に眩暈すら覚えた。
シャーリーの温もり、香り、質感、声、なにもかもが愛おしくて、堪らない。
「……姉さん。……抱きしめてもいい?」
尋ねた言葉にシャーリーはコクリと頷くことで答えた。声を出さないのは、恥ずかしがっているせいらしい。
華奢な身体に腕を回すと、伝わってくる体温に高ぶる。ラルフは欲望と戦って、熱く頭を擡げ始めた肉棒を隠すために、自らの足を交差させて、歯を食いしばっていた。
シャーリーも抱きついてきているため、柔らかな胸の膨らみが押しつけられる。
もう限界だった。
背中に回した手を動かすと、いやらしい触り方になってしまう。
――それなのに。
「もっと……抱きしめて……」
胸に頬をすり寄せられて、甘い声音で囁かれる。理性が焼き切れそうになった。
「それは……いいけど……。……こうしていると、なんだか変な気分になるんだ。ごめん」
変な気分どころの話ではない。ラルフの下肢は熱く張りつめて、大惨事の一歩手前だ。
これ以上近づけるわけがない。ラルフは困り果てて目を逸らした。
「……いや……っ」
だが、シャーリーはギュウギュウとしがみついてくる。
薔薇石鹸の甘い芳香が鼻孔を擽り、まだ湿った髪がラルフの肌に張りついてきた。濡れた長い髪がゆっくりと滑り落ちる感触にすら、身震いが走る。
「いやって……言われても。姉さん。……このままじゃ僕……。なにするか……」
シャーリーを引き離そうとして、ラルフは彼女の背中に手を回した。だが、華奢な肩や細い腰の感触に誘われるように逆にいやらしく動かしてしまう。
ラルフの手が這うたびに、シャーリーの身体が反応する。堪らなくなっていっそう肌を擦りつけた。
「……ん……っ」
シャーリーは逃げない。それどころかさらに身体を密着させてくる。
「ラルフに触られると、……嫌な記憶が薄れる気がするから……。もう少しだけ触って欲しいの」
甘い声音で耳元に囁かれては、もう我慢などできなかった。これは夢なのだろうか?
それともからかわれているのではないだろうか。
疑いたくもなる。だが、温かい身体も、甘い匂いも、すべてが生々しくこれが現実だと知らしめてくる。ラルフは力の限り、シャーリーを抱きしめ返した。
「……ね、姉さん……。そんなこと言われたら、僕、……本当に触ってしまうよ」
切実に訴える。すると、シャーリーは小さく頷く。
「ラルフなら、いいから……」