
敵しかいない政略結婚のはずが、夫に密かに溺愛されてます!?
- 著者:
- 春日部こみと
- イラスト:
- らんぷみ
- 発売日:
- 2025年04月03日
- 定価:
- 869円(10%税込)
誤解させてすまない。今夜たっぷりわからせてあげよう。
長く続いた戦争が終わり、和平の象徴として元敵国の王に嫁ぐことになったアンナリーザ。しかし自分は、夫となったカーティスにとって、親類を殺した仇の娘。きっと憎まれているに違いない。案の定、王宮中の人たちから無視をされ、もちろんカーティスの視線も氷のよう。こんな四面楚歌な状況で一体どうすれば……と頭を抱えつつ、和平のためにと奮起するアンナリーザだが――。迎えた初夜、寝室を訪れたカーティスは、昼間とは別人のようにどろどろに甘やかしてきて……!?
生真面目な腹黒陛下×苦境にめげないポジティブ令嬢、『逆仮面夫婦』の行きつく先は……?


アンナリーザ
ペトラルカ王国の英雄の一人娘。幼い頃から不遇な環境にいながらも明るく聡明に育つ。

カーティス
レストニア王国の第三王子。冷静沈着で冷たい印象だが、目をみはるような美貌の持ち主。
不安に唇を引き結んでいると、カーティスの大きな手が伸びてきて、頬をゆっくりと撫でられる。乾いた掌の感触に少しだけホッとして体の強張りを解くと、額にキスを落とされた。
「大丈夫、無体を働いたりはしない」
優しい声に目を開くと、微笑んでいるカーティスと目が合った。
(……やっぱり、きれいな人だわ……)
何度見てもこの男は美しい。母親似の女性的な美貌なのに、骨格がしっかりしていて男性にしか見えない。それが余計にこの人の美しさに凄みを与えているのかもしれない。
「君を可愛がりたいだけだ。安心して、力を抜いていて」
宥めるような口調で言って、カーティスはアンナリーザが羽織っていたガウンを左右に開いた。
「……っ」
自分の体がカーティスの前に晒されているかと思うと、カッと頬に朱が走る。
何度も言うが、ガウンの下は例のスケスケのシュミーズ一枚だ。乳房の形も、腹も臍も見られている状況に羞恥心が込み上げた。ガウンを掛けてもらうまでこのほぼ裸の状態を晒していたのだから今更という気がしないでもないが、あの時までは初夜の義務感が大きくて、このスケスケシュミーズに関して半ばヤケクソのような気持ちでいた。それなのに、カーティスが変に優しい気遣いを見せるから、ヤケクソ感が薄れて羞恥心が戻ってきてしまったのだ。
自分の体の上に視線が注がれているのを感じて、アンナリーザはまたギュッと目を閉じた。
(……っ、は、恥ずかしい……)
「きれいだな」
独り言のようにカーティスが言って、つい、とシュミーズの胸元を引き下ろす。
「あっ……」
ぽろりと乳房がまろび出る感触に目を開くと、カーティスの口の中に自分の乳首が吸い込まれていくのを目の当たりにして仰天した。
「きゃ……ひぁんっ!」
強く乳首に吸いつかれて、甲高い悲鳴が上がる。濡れた熱い口の粘膜の感触が、自分の胸の先にあることが信じられない。だがそれよりも、初めて味わう強烈な快楽に驚いていた。カーティスの舌が乳首に巻き付き扱き上げる度に、ビリビリとした熱い快感がアンナリーザを襲う。
カーティスはさらにもう片方の乳首も指で弄り始める。指先でクルクルと捏ね回したり、二本の指でキュウッと引っ張られたりと、緩急をつけた刺激に、お腹の中心がジクジクと疼いた。
「ぁっ、……ぁあっ、ん、んぅ……へ、陛下、それ、ダメ……」
両方の乳首を同時に弄られると、もどかしいような、物足りないような、妙な熱を持ってくる。身の置き所がなくて堪らず腰を動かすと、カーティスが喉の奥で笑った。
だが彼は愛撫の手を止めることはなく、乳首にやんわりと歯を当てながら、もう片方を弄っていた手をするりと動かして下乳を撫でる。乳房の丸みを楽しむように指を滑らせた後、その手は触れるか触れないかくらいの強さを保って腹へと下りていった。
羽根のようなタッチで皮膚の薄い部分を触られると、くすぐったいのに、体の芯を震わせるような気持ち好さを感じて、ひとりでにビクビクと体が跳ねる。
(ああ、何、これ……恥ずかしいのに、気持ち好くて……なんだか、酔っ払ったみたいな……)
飲酒の経験は一度だけ、十六歳の誕生日に伯父に勧められて、葡萄の蒸留酒を呑んだことがあるだけだ。甘くて香りが良くて美味しくて、つい勧められるがままに杯を空けてしまったのだが、翌朝、地獄のような二日酔いを味わう羽目になった。それに懲りて以来、酒は呑まないことにしているが、酒を呑んでいる時の酩酊感は嫌いではなかった。楽しくてずっとケタケタ笑っていた気がする。
今の熱に浮かされたようなフワフワとした感じは、あの酩酊感によく似ていた。
カーティスの手が腰を撫で、内腿を滑るようにして脚の付け根へと辿り着く。
「あ……!」
秘処に触れられる危うさに、本能的に怯えを感じて顔を上げると、いつの間にか胸への愛撫をやめたカーティスが顔を寄せて鼻先を擦り合わせてきた。大丈夫、とでも言うように額をくっつけられると、怯えが少し和らいでしまうから不思議だ。
(私、どうしてこの人に安心しているのかしら……?)
夫だけれど、自分を殺すかもしれない人だ。冷たいと思ったらこんなふうに優しくて、訳がわからない。信用なんて到底できないはずなのに。
カーティスの指が、そっと閉じた花弁を割り開くと、中の泥濘へと指を一本差し挿れてきた。くちゅり、という微かな水音を耳が拾い、アンナリーザは恥ずかしさに泣きたくなる。
すると、カーティスがアンナリーザの寄った眉根にキスをして耳元で囁いてきた。
「大丈夫、体の力を抜いて」
その低い声に反応して体が安堵して強張りを解いた。だがどうしてこの人の声に安堵するのか、自分でもよくわからない。訝しく思ったが、カーティスが指を動かしてきたので、その疑問もすぐに頭から消えてしまった。
「少し動かすよ。苦しかったら言って」
「は、はい……」
自分の内側に他人の体の一部が入り込んでいる感触が、奇妙だった。
長い指が隘路を搔き分けるようぐるりと動く。絡みつく媚肉と戯れるように、指を曲げたり伸ばしたりしているのが、見えないけれどハッキリと感じられた。それが気持ち好いかどうかは、アンナリーザにはまだ判別がつかない。だが異物の侵入に、お腹の奥からとぷりと愛蜜が溢れ出すのがわかった。

『政敵の王子と結婚しましたが、推しなので愛は望みません!』

『逃げそこね』

『致死量の恋情』

『サキュバスは愛欲にたゆたう』

『裏切りの騎士は愛を乞う』

『勝負パンツが隣の部屋に飛びまして』

『腹黒従者の恋の策略』

『騎士は悔恨に泣く』

『藤平くんは溺愛したい!』

『ソーニャ文庫アンソロジー 騎士の恋』

『地味系夫の裏の顔』

『孤独な女王と黒い狼』

『偽りの王の想い花』

『狂犬従者は愛されたい』

『狂奪婚』

『三年後離婚するはずが、なぜか溺愛されてます』

『この結婚は間違いでした』

『死に戻ったら、夫が魔王になって溺愛してきます』

『三年後離婚するはずが、なぜか溺愛されてます~蜜月旅行編~』
