ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

狂騎士の最愛

狂騎士の最愛

著者:
荷鴣
イラスト:
鈴ノ助
発売日:
2020/09/03
価格:
700円(税抜)
 

ぼくはただ、きみと幸せになりたいだけだ。

白い容姿を理由に、忌み嫌われていた孤独な村娘のジアは、隣国の少年ルスランと恋をして、幼いながらも結婚を誓い合っていた。だが、戦争によりふたりは離れ離れになってしまう。数年後、ルスランはジアを探すため、貴族でありながら王の暗殺部隊となり、彼女の暮らす国に潜入を果たす。そこで思いもしない再会をしたふたりは、会えずにいた歳月を取り戻すかのように愛を交わし、互いのぬくもりに溺れていく。しかし再び、別離の危機が訪れて――!?

暗殺隊の騎士×鳩に愛される村娘、すべてを敵に回す一途な愛!

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登場人物紹介

ジア

ジア

生まれつき白い肌と髪を持つために、村で迫害されていた。ルスランと出会い恋をするが、離れ離れになってしまう。

ルスラン

ルスラン

狂戦士の血筋であることを厭い、騎士になることを避けていたが、行方知れずのジアを探すために剣をとる。

お試し読み

 覚醒したとたん、ジアはとぎれとぎれに息を吸った。全身がわななき、うまく息を吸えないのだ。辺りは真っ暗闇で、なにも見えない。ろうそくはすべて切れているようだった。
 はあ、はあ、と甘く、荒い、淫らな息が聞こえる。だが、ジアのものだけではなかった。
 全身の血はどくどくと脈打ち、おなかの奥はうねっている。汗が噴き出すほどのすさまじい官能だった。誰かに抱きしめられているけれど、闇のなかでわからない。しかし、このぬくもりを知っている。おなかにめいっぱい質量を感じるのは、刺さってる、と思った。
 ──ルスラン大好き。愛してる。
 く、と歯を嚙みしめたジアは、奥を苛む刺激に耐えていたけれど、我慢ができなくなってきた。ついには勝手に腰が動いた。本能なのか、身体が求めているのだ。ジアの動きに合わせて、くちゅくちゅと音が立つ。思うがままに揺らせば、上から熱い吐息が落ちる。
 ジアはさらに腰をくにくにと動かした。うずく奥を彼にこすりつけている。
 耳に届く彼の甘い喘ぎがうれしくて、ジアの頬に涙が伝う。こうしているのが幸せだ。ルスランがいる。ジアは、ルスラン、ルスラン、と思いながら、彼を強く感じるべく硬い猛りに擦りつける。
 なかが蠢動しはじめた。おなかの奥から頭の先までなにかが貫き、ジアの足はシーツを蹴った。びくびくと彼を締めつけては弛緩する。果てているのだ。
 はあ、はあ、と息をつけば、彼の両手が、余裕なくジアの腰をつかんだ。刹那、どく、と彼の猛りが脈打った。次第に熱いものがじんわりなかに広がって、浸透していった。
 ジアは、激しく胸を上下させながら、おなかの奥のぴくぴくとする彼を感じていた。
「くっ、……は。痛くない?」
 ジアは、?痛くない?と口をぱくぱくさせたけれど、伝わっていないと思った。なので、手探りで彼の背中に手をやった。ずるりと彼の汗ですべったのでまた置いた。
「ジア、痛い? 気持ちがいい? 教えて? ……あ」
 息づかいでわかる。彼は、ジアが話せないことを失念していたのだろう。そして、質問を悔いている。彼の腕が頭と腰に回って、強く抱きしめられた。洟をすする音がする。ジアもぐすぐすと洟をすすった。
 だが、失念していたのはジアこそだ。彼はひどい怪我をしているのに、構わず、ひとりよがりに腰を動かしてしまった。彼の様子をうかがっても暗くて見えない。ジアは、ごめんなさいとすがりついた。けれど、思わぬ答えが返ってくる。
「ジア、とても気持ちがよかった。ありがとう」
 額にふに、とついたのは、彼の唇だ。ジアは目をまるくする。お礼を言ったことのない彼が、はじめて言ったのだ。ジアは下唇を嚙みしめて、すぐにもう一度同じようにくねくねと腰を動かした。褒められたいし、彼が気持ちがいいのなら、なんでもしようと思った。
 が、うめきが聞こえたあとで遮られる。短く息が噴きかかり、彼が笑った。
「待て、だめだ。いまじゃない。きみはそんなに張り切らなくてもいいんだ」
 腰にある彼の手が、ジアをなだめるようにさすった。
「ジアとは違い、ぼくはすぐにできない。──は。もう一度硬くならないと……。次はぼくが動くから。……ここは? 痛くない?」
 彼の指が、ふたりの接合部をなぞる。張ってはいるけれど、うずきが勝ってそれほど気にならない。ジアが、?痛くない?とうなずくと、それで理解したようだった。
「そうか。きみを眠らせたのは正解だったか? ずっと迷っていた」
 顔にはりつく髪を指でかき分けられる。ジアも、彼の髪に触れ、右目があらわになるようにつまんだ。金の瞳を想像していると、手を取られ、そこに彼の唇がつけられた。
「ジア、きみは女になった。ぼくも男になった。正直に話せば、ぼくはきみのなかで一度果てている。刺す途中で果てたから、男としてふがいなくて最悪だ。それからは、こうしてずっと刺したままでいる。きみの身体……、いや。明るくなればきみは驚くと思う」
 ルスランは、ジアの鼻に指をのせ、「五年分の痕をつけた」とささやいた。
 ──五年ぶん……。
「きみは長い時間眠っていた。いまは真夜中だ。おそらくぼくは一度果てただけではない。途中で何度か意識がないんだ。数回は抱いていると思う。子ができるかもしれない」
 ジアがもう一度うなずくと、彼は息をこぼした。
「産んでくれるか? 乳を、与えてくれるか? 赤子の目が金でも、いいか?」
 ジアは、もごもごと口を動かした。いま声が出たなら、どれほどいいだろう。
?もちろん産むわ。たくさん抱きしめて、お乳をあげるの。金色の目、大好きよ?
 彼にぴとりと頬を寄せれば、頭を撫でられる。
 ジアは、彼の頬にくちづける。すると彼の顔の向きが変わって、口がジアの口についた。
「ジア、聞きにくいが大事なことだ。きみの身になにがあった? なにをひとりで抱えこんでいる? 聞きたい。いや、聞かなくてもいいんだ。でもぼくは夫だ。知りたいと思うのは当然だ。きみの喉をじっくり見たが、どこにも傷はなかった。声は精神的なものだろう。おしゃべりなきみが話せなくなるのはよほどのことだ。つらい目にあったのか?」
 洟をぐす、とすすると、彼の手がジアの目もとをさまよい、拭おうとする。泣いていると思っているのだろう。実際、涙を落としていた。
「きみが眠っているあいだ、きみとひとつになったまま色々なことを考えた。過去のこと、未来のこと、そして現在。こんなことならきみから離れなければよかったと、国に帰らなければよかったと思った。ぼくはなにをおいてもきみを守らなければならなかった。しかし、すぐ否定している。ぼくがあの村に残っていたら村は全滅していた。きみを連れて帰れば、あの過酷な道中きみは殺されていた。ぼくは力をつけていなければ、弱くてきみを守ることはできない。最善がわからない。なにが正しいか、どうすればよかったのか」
 一気に話したために、彼は長々と息をつく。
「長い時間考えても答えは出なかった。いまも悩んでいる。──は、無力だな。きみの声が出ないと知りいまごろ慌てている。後悔もしている。前もってできたことはあったはずなんだ。そしていま、きみの声が聞けたならと願っている。まさか、きみの声が聞けないなんて思ってもいなかった。きみの、おしゃべりな声が聞きたい。人は身勝手なものだとつくづく思う。でも、ぼくはどうしても理由を知りたいんだ。守るために」
 目の奥が熱く痛んだ。さらに涙はやってくる。ジアの目からとめどなくあふれ、伝った。
 いま、光がなくてよかったと思った。きっと、すがるような顔で彼を見ているからだ。
 ジアは、もしも声が出ていたとしても、彼にはなにも伝える気はないのだ。ジアの身に起きたことは、幸せとはいえない。彼にはなにも望まないし、ジアのためになにもしなくていい。ただそばにいられるだけで満足だ。

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