ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

恋が僕を壊しても

恋が僕を壊しても

著者:
栢野すばる
イラスト:
鈴ノ助
発売日:
2019/08/03
価格:
680円(税抜)
 

君のためなら、命も誇りもすべてを捨てる。

悪神の呪いと恐れられる致死率の高い疫病――リゴウ熱。その治療剤の製造者であるイナは、森の奥で王太子リィギスと出会う。過酷な環境で育てられたイナと、生来の容姿ゆえに『呪いの王子』と忌避されているリィギス。孤独な二人は惹かれあい、儚い逢瀬で恋を育んでいく。「可愛い、全部可愛い、僕のイナ……」誠実で優しいリィギスに甘く情熱的に抱かれ、深い愛と快楽に溺れていくイナ。けれど彼女には、リィギスには言えない残酷な秘密があって……!?

清廉潔白な“呪いの王子”×死期が迫る少女、絶望で歪んだ純愛の行方は……?

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登場人物紹介

イナ

イナ

治療剤を作るために毒を飲まされ続けている。製造者の役目以外のことはほとんど何も教えられずに育った。

リィギス

リィギス

実直な王太子。悪神の色である青色の目を持つために忌避されている。イナの秘密を知らず、結婚したいと思っている。

お試し読み

「お帰りなさいませ」
 寝台の上に平伏し、やはりすぐ脱げてしまう寝間着の前を摑む。
 深々と頭を下げるイナを、リィギスが驚いたように見つめた。
「どうした、そんなに震えて」
「見間違いです、震えてはおりません。リィギス様はそこに座ってください」
 勇気を振り絞って、イナは平伏したまま傍らを指さす。
「何でだい?」
「そこに座ってください、早く。お願いします」
 本の内容を頭に思い浮かべつつ、イナは懇願する。
 深く考えては駄目だ。勇気がある今のうちに、書いてあったとおりの手順を踏み、リィギスに『愛して』もらわなければ。
 寝室の心得は、イナの想像を絶する内容だった。
 子供の種は、大神殿が配っているわけではない。それに口から飲んでもお腹に子供は生えないのだ。
 ──私の……馬鹿……!
 愛しいリィギスをこれ以上悲しませる前に、早くやり直さなくては。
 リィギスが笑いながら水の瓶を置き、イナの示す場所に腰を下ろした。
「はい、これでいい?」
 優しいリィギスの声に励まされ、イナは必死の形相で顔を上げた。
 膝立ちになり、強ばった腕を動かして、何もしなくてもすぐほどける自身の帯を解く。そして、肌にまとわりつく絹の寝間着も脱いだ。
 一糸纏わぬ姿になり、最近大きくなる一方の邪魔な胸を隠す。
 啞然としているリィギスの視線を感じながら、イナは勇気を出して言った。
「リィギス様、昨夜は申し訳ありませんでした。覚えましたので、今から私がします」
 イナは震える両手を伸ばして、リィギスの頬に添える。
 リィギスは、真っ青な目を大きく開いたまま、何も言わない。
 凍ってしまったリィギスの唇に、イナは勇気を振り絞って、自分の唇を押しつけた。
 口づけをしながら、本に書かれていたとおりにリィギスの唇を舐め、彼の手を自身の揺れる乳房に導く。
 ──あとは、あとは……リィギス様の服を脱がせ……て……。
 心臓が爆発しそうなくらいに勢いよく脈打つ。
 首筋に抱きついていた腕を緩め、彼の帯に手を伸ばした。これを解き、男性の肌を露わにして、身体を押しつけるようにして抱きつくのだ。
 ──帯……なにこれ……解けない……。
 困った。男帯の解き方が分からない。いや、あの本に書いてあったはず。焦りのあまり何も思い出せない。
 ──解けない……どうしよう……。
 途方に暮れ、イナは更に帯をまさぐろうとした。そのときだった。
「やめてくれ、抑えられなくなる」
 リィギスが苦しげに言う。必死すぎて気づかなかったが、彼の腕はいつの間にかイナの裸の腰に回っていた。
 イナは強くかぶりを振る。
「いいんです。ちゃんとやります、最後まで!」
「良くないよ、君は何も知らないのに」
「……っ……ほ、本で……読んだから……覚えました。私、何も知らなくて、あんな風に、毛布に隠れたりして……ご、ごめんな……さ……」
 緊張と申し訳なさと恥ずかしさで、どっと涙が溢れた。だが泣いている場合ではないのだ。イナはしゃくり上げながら、必死に口を開く。
「あ、あとは、本のとおりに、私が、大きくなるまで、手でしま……」
 諦めずにもう一度帯に手を伸ばした瞬間、イナの身体は寝台に押し倒された。
「……してくれなくていい、もうなっているから」
 リィギスが大きな手でイナの手を摑み、下腹部に触れさせた。
「ね……? 僕は、これまでどんな女性に迫られても何も反応しなかったんだ。……でも君に口づけされただけで、こうなった」
 呆然としたまま、イナは服の下で存在を主張するそれをそっと握る。
「あ、あの、これも本に、本に載っていました! 興奮すると大……あ、あの……」
 言葉尻は口の中で弱々しく消えていく。これまでの人生で一番恥ずかしい時間だった。全身が音を立てて破裂しそうだ。
「そうだよ。色々と覚えてくれてありがとう」
 耳まで赤くなり、リィギスが低い声で言う。
 のし掛かってきたリィギスの顔がすぐそばに近づいた。
 宝石よりもくっきりした青の瞳に、緊張に引きつったイナの顔が映る。
「嬉しい。イナが僕のことを思いやってくれて」
 染み入るような優しい声に、再びイナの目から、呆れるほどの涙があふれ出す。
 彼は、昨夜無礼な態度を取ったイナをまったく怒っていないのだ。
 出会った頃から変わらず、いつもどんなときも優しい。悪いのはイナの方だったのに。
 泣いているイナを宥めるように、リィギスが口づけをしてくれた。大きな身体に押し倒され、唇を塞がれて、身体中の力が抜けていく。
「僕はイナを抱きたい。黙っていたけど、本当はずっと前から抱きたかった。イナの中に入ってそこで果てたいんだ。……いい?」
 唇を離したリィギスはそう言って半身を起こし、もどかしげに寝間着を脱ぎ捨てた。
 イナは息を呑む。
 初めて見るリィギスの裸身は、滑らかで、引き締まっていて、魂を奪われるほど美しかった。くっきりとした青い目に見据えられると、動けなくなる。
 呪いの青という言葉が、イナの頭に浮かんだ。
 確かに、ある意味呪いなのかもしれない。
 こんなに青く美しい瞳を見たら、永遠に忘れられないだろうから……。
 そう思いながら、イナは、本に書いてあった男性の大切な場所にそっと視線を移した。
 とても大きいので、大丈夫だろうかと不安がよぎる。
 真っ赤になって遠慮がちに視線を向けるイナに、彼が困ったように微笑みかけた。
「恥ずかしいな、そんなに見られたら」
「あ、ご、ごめんな……さい……」
「見えないようにしてしまおう」
 リィギスが秀麗な頬を恥じらいに染め、イナの唇に優しく接吻した。だが、いつものようにはすぐに唇は離れない。
 口づけたまま、リィギスの手が遠慮がちにイナの肌の上を這う。
 素肌に触れられるのが恥ずかしくて、イナは身じろぎした。だが、初めは遠慮がちだったリィギスの指が、次第に熱を帯び始めた。
 指が肩を辿り、乳房の膨らみにさしかかって、戸惑ったように止まる。
 ──リィギス様?
 不思議に思ったとき、リィギスが思い切ったように、手をイナの腿に伸ばす。
 同時に、唇が離れた。緊張のあまり、またしても無意識に息を止めていたイナは、涙目になって大きく息を吸った。
 だが、次の瞬間凍り付く。
 腿の辺りを摑まれ、脚を大きく開かされたからだ。
 ──な……!
 絶句したイナは、慌てて本の内容を思い出す。大丈夫だ。こうやって身体を開いて、相手を受け入れるのが作法だと書かれていた。
 ──う、う、無理……見ないで、見ないでください……!
 リィギスの視線を、言葉にできないほど恥ずかしい場所に感じる。手を伸ばして脚の間を隠そうとしたが、駄目だった。やんわりと取り払われ、顔がだんだん熱くなってくる。
 イナは、恐る恐るリィギスに言った。
「そんなところ、ご覧になっては駄目です」
 だが、リィギスは何も言わず、身を乗り出して、さらけ出された乳嘴に唇を押しつけた。
 ずくりという疼きと共に、その場所が硬くとがっていたことに気づく。つんと立った蕾を、リィギスの唇が優しく食んだ。
「あ……っ!」
 イナは思わず声を上げ、身体をよじる。二の腕がぶわっと粟立った。身体中の感覚が、口づけられた乳嘴に集中する。
 リィギスは、唇にわずかに力を込めた。じんとした疼きが再び身体を駆け抜けた。イナは背を反らし、身をよじって、悪戯な唇を避けようとした。
 だが、男の力は無慈悲だった。イナの抵抗では、リィギスの身体はまるで揺らがない。
「何でそんなところ、吸って……あぁぁっ……」
「君の肌は甘いんだな」
「あ、甘くないです、どうして」
「いや、甘いよ、甘くてどうにかなりそうだ」
 そう言ったリィギスが、舌を乳房の下に這わせた。
 ──リィギス様、どうして、肌に味なんて……。
 イナの肌が、身体中、羞恥に赤く染まっていく。舌の感触が、徐々に下の方へと移っていく。戸惑っていたイナははっとなって、頭を起こした。

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