ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

サキュバスは愛欲にたゆたう
  • yondemill

サキュバスは愛欲にたゆたう

著者:
春日部こみと
イラスト:
すらだまみ
発売日:
2016/06/03
価格:
640円(税抜)
 

無自覚か、この小悪魔め。

女侯爵のキャサリンは、喘息の発作に苦しんでいたところを、ラスと名乗る『何でも屋』に助けられる。60歳以上も年上の夫に初夜の床で突然死なれたせいで、男の精を奪う夢魔『サキュバス』と呼ばれているキャサリンだが、実はまだ処女。恋も知らない彼女は、ラスの優しさに触れて好意を抱くようになり……。湯治のために訪れた温泉で出くわした彼に、甘い言葉と愛撫で蕩かされ、純潔を捧げるキャサリン。だがその後、ラスの正体と思惑を知って――!?

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登場人物紹介

キャサリン

キャサリン

女侯爵。初夜の床で夫に死なれ「サキュバス」呼ばれることに。社交界での評判回復は諦めて領地に引き篭もっている。

ラス

ラス

キャサリンがお忍びで町の視察をしていたときに出会った『何でも屋』。キャサリンに興味がある様子……?

お試し読み

「キャス」
 至近距離で見つめられ名を呼ばれる。透き通った眼差しがまっすぐキャサリンに注がれていた。その真剣な色に、キャサリンは目を瞬いた。
「な、なに……?」
「今更訊くのもなんだが……お前、初めてか?」
「!」
 まさか露骨に訊かれるとは思わず、キャサリンは絶句する。
 だがそれが答えとなってしまったようで、ラスはその刹那瞠目し、やがておもむろに微笑んだ。少年がはにかんだような、どこか初々しさすら感じる表情だった。
「そうか」
「なっ、なにが『そうか』なの……!」
 まだ肯定はしていないと反論しようと開いた口を、ラスがキスで塞ぐ。そのまま口の中を揉みくちゃにされ、ようやく解放された時、ラスが言った。
「任せておけ。責任は取る」
 とても良い笑顔だった。
「せ、責任って……」
 キャサリンは呆気に取られた。
 自称『何でも屋』のほとんど無職の男が何を言っているのだろう。
 だがラスは力強く頷き、キャサリンの額にキスをする。
「ああ。お前が何者であろうと、俺が護る」
「……えっ、と……」
「だから安心して、お前のすべてを、俺に寄越せ」
 ──なんの安心材料もないのですけど!
 と罵倒したくなったが、けれどキャサリンはそこで噴き出してしまった。
 なんだろう、この自信。一体どこから来るのか。
 得体のしれない男に、責任を取り、護ると宣言された。なんの保証もない戯言だ。それなのに、どうしてこんなに嬉しいのだろう。
 ──いいじゃない。どうせたった一度の夢のようなものだもの。
 さばけた貴族のご婦人の中には若い俳優を愛人として傍におく者もいるくらいだから、そもそも評判の悪いキャサリンがラスを愛人として囲うことくらい、さして問題視されないだろう。
 だがキャサリンはそうするつもりはなかった。
 男は嫌いだ。
 ロクデナシのあの父親や、変態の亡き夫。興味津々に下卑た視線を向けるくせに、悪しざまに噂する社交界の男ども。
 キャサリンを失望させ、愛だの恋だのに対する憧れを木端微塵に打ち砕いた者たちだ。
 そんなものにうつつを抜かして身を持ち崩したくはない。
 ──だからこれは、一度きりの夢。
 愛し愛された異性の腕に抱かれる。
 あどけない少女の頃に見ていた夢を叶え、そして葬るための儀式なのだ。
 全てをこのひと時に込めて、忘れてしまおう。
 だからキャサリンは微笑んだ。少女だった頃に憧れていた全てを、ラスに委ねて。
「ええ、ラス。私のすべてをあなたに」
 キャサリンの微笑にラスが小さく息を呑み、だがすぐに満足そうに口の両端を上げた。
「しかと、受け取った」
 そして厳かにキャサリンの唇に自分の唇を合わせる。
 重ねるだけのそれは、まるで誓いのキスのようだった。
 互いに目を閉じていたのはどのくらいの時間だったのか分からない。唇を離したのは、ラスが先だった。
 彼はキャサリンの両腕を自分の首に回させると、細い腰を自身の両手で摑み、浮かせた。
「摑まって」
 大きな手を二人の隙間に滑り込ませ、落ち着きを取り戻した花芽を柔らかく擦る。
「ぁっ」
 ヒクン、と身を揺らすキャサリンに、ラスが優しく囁きかける。
「大丈夫、怖かったら俺にしがみついていろ」
 キャサリンは素直にそれに従い、ラスの首に回した腕に力を込める。ついでになんだか甘えたくなり、筋肉の筋が浮いた逞しい首筋に顔を埋めた。唇にラスの肌を感じ、好奇心からちろりとそこを舐めると、ラスがくすぐったそうに肩を揺らした。
 塩辛い汗の味と、ラスの匂いがした。
「こら、いたずらをするな」
 窘められるのも嬉しくて、キャサリンはふふっと笑う。ラスはそれに応えるように溜息をついたが、「余裕があるのも今の内だぞ」と言って、再び潤いを取り戻した蜜口へ、張り詰めた自分自身を宛てがった。
 にゅちり、といやらしい音がして、とんでもなく質量のあるものが自分のそこを圧迫するのを感じた。
 キャサリンは本能的に恐怖を感じ、咄嗟にラスに取り縋るようにしがみつく。
「いい子だ。そのままゆっくりと腰を落として」
 低い穏やかな声で促され、キャサリンは恐る恐る身体の力を抜いた。

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